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特定技能(受入れ後の管理編)
特定技能外国人の受入れ後に必要となる業務
「特定技能」の在留申請を行い、許可を取得し、いよいよ特定技能外国人の雇用が開始されると必ずやらなければならない業務が発生します。
ひとつ目は「管理簿の作成・備え置き」です。管理簿は、記載事項のみが決まっていますが様式の設定がありません。従って、各受入れ機関において独自に管理簿を作成する必要があります。また、管理簿は特定技能外国人との雇用契約の終了した日から1年以上保存しておく必要があります。
ふたつ目は「届出」です。届出には「随時の届出」と「定期の届出」があり、雇用契約や支援の内容に少しでも変更がある場合には随時の届出が、四半期に一度は定期の届出が義務付けられます。
これら「管理簿の作成・備え置き」と「届出」の義務をきちんと履行していない場合、罰則の規定があしますし、出入国在留管理局において「受入れ機関適合性がない」と判断されれば特定技能外国人を雇用し続けることができなくなります。
受入れ機関の管理簿の作成・備え置き
特定技能外国人を雇用した受入れ機関は、次のふたつの文書を作成し、特定技能外国人を活動させる事業所に雇用契約の終了の日から1年以上備え置かなければなりません。
ひとつは「特定技能外国人の活動の内容に係る文書」であり、特定技能外国人の雇用条件や活動状況等についての記載が必要です。もうひとつは「支援の実施状況に係る文書」であり、支援体制や支援実施状況等についての記載が必要です。
これらの文書は、管理簿の形式とすることになりますが、様式の定めがありませんので、「定期の届出」の届出事項を意識した管理簿の作成が必要となります。管理簿の記載事項を簡単に表にまとめると次のとおりとなりますが、実際の届出に耐えられる程度の管理簿とするには、かなり詳細な項目まで記載する必要があります。
特定技能外国人の活動の内容に係る文書 |
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① |
特定技能外国人の管理簿(特定技能外国人の名簿と活動状況に関する内容) |
② |
特定技能雇用契約の内容 |
③ |
雇用条件 |
④ |
賃金等の待遇に係る事項(賃金台帳) |
⑤ |
出勤状況に関する書類(出勤簿等) |
支援の実施状況に係る文書 |
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① |
支援実施体制に関する管理簿 |
② |
支援の委託契約に関する管理簿 |
③ |
支援対象者に関する管理簿 |
④ |
支援の実施に関する管理簿 |
特定技能所属機関の随時の届出
特定技能外国人を雇用した受入れ機関は、特定技能外国人との雇用契約の内容や雇用条件の変更、支援計画の変更等のみならず、特定技能外国人の受入れが困難になった場合や出入国または労働関係法令に違反してしまった場合にも届出が必要となります。これらの届出は、届出事由が発生した日から14日以内に地方出入国在留管理局に提出しなければなりません。これらの届出を怠ったり虚偽の届出をすると罰則の適用の対象となる可能性がありますので、確実に実施することが必要です。
具体的には次のような場合に届出が必要です。なお、届出が必要なケースごとに届出書とともに提出する書類が変わってきますので、確認が必要となります。
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届出の種類 |
届出が必要なケース |
① |
特定技能雇用契約に係る届出 |
・当初の契約よりも期間を短くする場合 ・就業場所(事業所)を変更する場合(連絡先のみの変更を除く) ・運用要領別冊(分野別)において就業場所(事業所)について確認対象の書類が定められている場合 ・労働者派遣の場合であって、在留諸申請の際に提出した派遣計画書に記載していない派遣先又は就労(作業)場所で就労することとなる場合 ・同一分野内で従事する業務区分を変更する場合 ・分野別要領が定める「特定技能外国人が従事する業務」に従事しないこととなった場合 ・変形労働時間制を採用又は廃止した場合 ・所定労働がフルタイム(労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ、週労働が30時間以上)ではなくなった場合 ・年間合計休日日数を当初の契約より少なくする場合 ・当初の契約より休暇日数を減らす場合(増やす場合は届出不要) ・当初の契約時の基本賃金を変更する場合 ・退職に関する事項に変更があった場合 ・健康保険・厚生年金保険の適用事業所となった場合 ・健康保険・厚生年金保険の適用事業所とならなくなった場合 ・労働保険の適用事業所となった場合 ・特定技能雇用契約の終了の場合 ・新たな特定技能雇用契約の締結の場合 |
② |
1号特定技能外国人支援計画の変更に係る届出 |
・支援責任者の役職を変更する場合 ・新たに支援責任者を選任する場合 ・支援計画書に記載した支援責任者が退任した場合 ・支援計画書に記載した特定技能所属機関の支援担当者数が減少した場合 ・支援責任者の役職を変更する場合 ・新たに支援責任者を選任する場合 ・支援計画書に記載した支援責任者が退任した場合 ・支援計画書に記載した支援担当者数が減少した場合 ・新たな登録支援機関との間で支援委託契約を締結した場合 ・登録支援機関との支援委託契約を修了し特定技能所属機関が支援を行う場合 ・支援内容を変更する場合 ・支援実施予定を「無」に変更する場合 ・支援担当者を変更する場合(氏名は婚姻等による場合を除き、役職の変更を含む) ・支援の委託の有無を変更する場合 ・支援を委託する相手方を変更した場合(委託先の同一性に変更がない場合を除く) ・支援実施方法を変更する場合 ・支援の実施言語を変更する場合 ・生活オリエンテーションの実施予定時間を変更する場合 ・定期的な面談の実施予定時期を変更する場合 |
③ |
支援委託契約に係る届出 |
・登録支援機関との間で1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する契約を締結した場合 ・支援委託契約書第1条に定める委託する支援業務を変更した場合 ・支援委託契約書第2条に定める委託料を変更した場合 ・支援委託契約書第6条の契約期間を変更した場合 ・登録支援機関との支援委託契約が終了した場合 |
④ |
受入れ困難に係る届出 |
・経営上の都合(非自発的離職)、特定技能所属機関の基準不適合、法人の解散、個人事業主の死亡、特定技能外国人の死亡、病気・怪我、行方不明、重責解雇(労働者の責めに帰すべき事由によるもの)、自己都合退職等により14日以上にわたって活動する見込みが立たない場合 |
⑤ |
出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為(不正行為)に係る届出 |
・出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を認知した場合(不正の程度や態様を問わない) |
特定技能所属機関の定期の届出
特定技能外国人を雇用した受入れ機関は、四半期ごとに翌四半期の初日から14日以内に、定期の届出を地方出入国在留管理局に提出しなければなりません。この届出も、届出を怠ったり虚偽の届出をすると罰則の適用の対象となる可能性がありますので、確実に実施することが必要です。
ここでいう四半期とは、受入れ機関の決算期に合わせるのではなく次のとおり決められています。
第1四半期:1月1日~3月31日
第2四半期:4月1日~6月30日
第3四半期:7月1日~9月30日
第4四半期:10月1日~12月31日
また、届出事項については次のとおりとなります。
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届出の種類 |
特記事項 |
① |
特定技能外国人の受入れ状況に係る届出書 |
・②,③の届出と同時に提出 |
② |
支援実施状況に係る届出書
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・①,③の届出と同時に提出 ※1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合は届出不要 |
③ |
活動状況に係る届出書
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・①,②の届出と同時に提出 |
登録支援機関の随時の届出
登録支援機関にも「随時の届出」がありますが、登録支援機関の場合、登録事項に変更があった場合や登録支援機関業務の休廃止、再開に関する届出ということになります。これらの届出は、届出事由が発生した日から14日以内に地方出入国在留管理局に提出しなければなりません。ただし、③支援業務の再開に係る届出書については、再開予定日の1か月前までに提出しなければなりません。届出後、出入国在留管理局において登録拒否事由に該当することが確認された場合、当該変更を是正するよう指導があり、この指導に従わない場合は登録が取り消されることがあります。
具体的には次のような場合に届出が必要です。なお、届出が必要なケースごとに届出書とともに提出する書類が変わってきますので、確認が必要となります。
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届出の種類 |
届出が必要なケース |
① |
登録事項変更に関する届出書 |
・氏名又は名称を変更した場合 ・住所を変更した場合 ・代表者の氏名を変更した場合 ・支援業務を行う事務所の所在地を変更した場合 ・支援業務の内容及び実施方法を変更した場合 ・支援業務を開始する予定年月日を変更した場合 ・登録申請時に申請書に記載した予定年月日に支援業務を開 始しない場合 ・特定技能外国人からの相談に応じる体制の概要を変更した 場合 ・対応可能言語を追加又は削除した場合 |
② |
支援業務の休止又は廃止に係る届出書 |
・支援業務を休止又は廃止した場合 ※支援業務を廃止する場合は登録支援機関登録通知書を地方 出入国在留管理局に返納する必要あり |
③ |
支援業務の再開に係る届出書 |
・休止した支援業務を再開しようとする場合 |
登録支援機関の定期の届出
登録支援機関の「定期の届出」は、支援実施状況に係る届出のみとなります。四半期ごとに翌四半期の初日から14日以内に地方出入国在留管理局に提出しなければなりません。
特定技能外国人受入れ後の管理について(まとめ)
「特定技能」は、ビザ申請における提出書類が多く申請の難易度が高いものではありますが、許可となり、実際に特定技能外国人の受入れが始まると各種管理簿の作成備え置きや各種届出にも気を配らなければなりません。そして、意図せずとも管理簿や届出に抜けや漏れがあれば、最悪の場合、罰則の適用もありますので、受入れ機関はかなり神経を使うところだと思います。法令や運用要領をよく読んで受入れ機関自ら対応することは可能ですが、心配であれば専門家のサポートを考えることになると思います。
当事務所では、このような特定技能外国人を受入れた後に必要となる業務についてもサポートしております。各種管理簿および各種届出一覧を提供するとともに受入後の特定技能業務全般にわたってご相談いただけます。