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特定技能(ビザ申請編)
在留資格「特定技能」とは
特定技能とは、深刻化する人手不足に対応するため、これまでの外国人材の受入れ制度を拡充し、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる仕組みとして、2019年に施行された改正入管法により新しく創設された在留資格です。
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」がありますが、一般的に最初は「特定技能1号」を目指すことになります。「特定技能2号」は、より高い技能水準が必要であり、そのことが試験等で確認される必要があります。つまり、要件がクリアできれば「特定技能1号」を経なくてもいきなり「特定技能2号」になることも不可能ではありませんが、現実的にはそのハードルは高いと言えるでしょう。
「特定技能1号」について
特定技能1号は、特定産業分野に属する「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を要する業務に従事する在留資格とされています。現在は、法務大臣が指定する14産業分野に限定されています。
【特定技能1号のポイント】
〇 在留期間:1年,6か月又は4か月ごとの更新,通算で上限5年まで
〇 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験免除)
〇 本語能力水準:試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験免除)
〇 家族の帯同:基本的に不可
〇 入れ機関又は登録支援機関による支援:必要
「特定技能2号」について
特定技能2号は、特定産業分野に属する「熟練した技能」を要する業務に従事する在留資格とされています。現在は、法務大臣が指定する14産業分野のうち、「建設」と「造船・舶用工業」の2分野に限られます。
【特定技能2号のポイント】
在留期間:3年,1年又は6か月ごとの更新(更新回数に制限なし)
〇 技能水準:試験等で確認
〇 日本語能力水準:試験等での確認不要
〇 家族の帯同:要件を満たせば可能
〇 受入れ機関又は登録支援機関による支援:不要
「特定技能」の許可要件
特定技能の在留資格を得るためには、地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書交付申請」(海外から呼び寄せる場合)または「在留資格変更許可申請」(日本に在留する外国人が在留資格を変更する場合)を行い、在留資格認定証明書の交付または在留資格変更許可を受けなければなりません。
その際の許可要件は大きく次の5つに分けることができ、これら全ての要件を満たす必要があります。
Ⅰ 特定産業分野該当性
Ⅱ 業務区分該当性
Ⅲ 受入れ機関適合性
Ⅳ 契約適合性
Ⅴ 支援計画適合性
Ⅰ 特定産業分野該当性
特定技能外国人を受入れる機関は、法務大臣が指定する人材確保が困難な産業分野(これを「特定産業分野」と言います。)に属している必要があります。
現在、法務省令により次の14の産業分野が指定されています。このうち、③素形材産業分野、④産業機械製造業分野、⑤電気・電子情報関連産業分野、⑥建設分野、⑧自動車整備分野、⑩宿泊分野、⑪農業分野、⑫漁業分野、⑬飲食料品製造業分野、⑭外食業分野については、分野ごとに定める一定の日本標準産業分類に該当している必要があります。
① 介護分野
② ビルクリーニング分野
③ 素形材産業分野
④ 産業機械製造業分野
⑤ 電気・電子情報関連産業分野
⑥ 建設分野
⑦ 造船・舶用工業分野
⑧ 自動車整備分野
⑨ 航空分野
⑩ 宿泊分野
⑪ 農業分野
⑫ 漁業分野
⑬ 飲食料品製造業分野
⑭ 外食業分野
Ⅱ 業務区分該当性
特定技能1号として分野ごとに定められている業務区分は次のとおりです。特定技能1号が許可されるためには、主たる業務としてこれらの業務区分に該当する業務を行う必要があります。なお、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することが可能です。
特定技能業務区分 |
||
① |
介護分野 |
身体介護等 ※訪問介護は対象外 |
② |
ビルクリーニング 分野 |
ビルクリーニング(建物内部の清掃) |
③ |
素形材産業分野 |
鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、塗装、溶接 |
④ |
産業機械製造業分野 |
鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立、電気機器組立、プリント配線板製造、プラスチック成型、塗装、溶接、工業包装 |
⑤ |
電気・電子情報関連 産業分野 |
機械加工、金属プレス加工、工場板金、めっき、仕上げ、機械保全、電子機器組立、電気機器組立、プリント配線板製造、プラスチック成型、塗装、溶接、工業包装 |
⑥ |
建設分野 |
型枠施工、左官、コンクリート圧送施工、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ、とび、建築大工、配管、建築板金、保温保冷、吹付ウレタン断熱、海洋土木工 |
⑦ |
造船・舶用工業分野 |
溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立 |
⑧ |
自動車整備分野 |
自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備 |
⑨ |
航空分野 |
空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)、航空機整備(機体、装備品等の整備業務等) |
⑩ |
宿泊分野 |
フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等 |
⑪ |
農業分野 |
耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)、畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等) ※派遣形態可 |
⑫ |
漁業分野 |
漁業(漁具の作製・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)、養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等) ※派遣形態可 |
⑬ |
飲食料品製造業分野 |
飲食料品全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生) |
⑭ |
外食業分野 |
外食産業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) |
Ⅲ 受入れ機関適合性
特定技能外国人を受入れる機関は、「外国人との雇用契約を確実に履行することができるか」および「外国人への支援を適正に実施することができるか」という2つの観点から審査されます。申請には、これらを確認するための資料や誓約書等の提出が求められます。具体的には次のとおりです。
雇用契約の確実な実施に係る基準 |
|
① |
労働関係法、社会保険や税に関する法律が守られていること ※労働保険、健康保険、厚生年金保険の保険料や税金等を適切に納付しているか猶予の許可を得ている必要があります。 |
② |
外国人との特定技能雇用契約の締結前1年以内に非自発的離職者を発生させていないこと |
③ |
外国人との特定技能雇用契約の締結前1年以内に外国人(技能実習生を含む)の行方不明者を発生させていないこと(受入機関に責任がある場合のみ) |
④ |
関係法律による刑罰を受けていないこと(5年経過しない場合) ※「関係法律」は特定技能基準省令第2条第1項第4号を参照 |
⑤ |
受入機関やその役員が精神機能の障害や破産手続開始の決定を受ける等の欠格事由に該当しないこと |
⑥ |
技能実習の実習認定取り消しを受けていないこと(過去5年以内) |
⑦ |
出入国または労働関係法に関する不正行為を行っていないこと(過去5年以内) ※外国人に対する暴力、パスポートや在留カードの取り上げ、報酬の不支給、虚偽の申請や報告等が該当します。 |
⑧ |
暴力団排除の観点からの欠格事由に該当しないこと(暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年経過しない場合) |
⑨ |
特定技能外国人の活動の内容に係る文書を雇用契約終了の日から1年以上備え置くこととしていること ※活動の内容に係る文書とは、「特定技能外国人の管理簿」、「特定技能雇用契約の内容」、「雇用条件」、「賃金台帳」、「出勤簿等」をいいます。 |
⑩ |
保証金の徴収・違約金契約等による欠格事由に該当しないこと ※外国人やその家族等から保証金や違約金を徴収したり、保証金や違約金を徴収する契約を締結したりする等はできません。欠格事由に該当すると以後、5年間受入れ不可となります。 |
⑪ |
1号特定技能外国人の支援費用を外国人に負担させないこととしていること ※支援費用は全て受入機関の負担となります。 |
⑫ |
派遣の場合、派遣元が、当該外国人が従事することとなる特定産業分野に関する業務を行っていること ※派遣形態は、「農業分野」と「漁業分野」のみとなります。 |
⑬ |
労災保険の適用事業所である場合、労災保険に係る保険関係の成立の届出を適切に履行していること(労災保険の代替措置として労災保険に類する民間保険に加入していることを含む) |
⑭ |
特定技能雇用契約を継続して履行する体制を有していること ※貸借対照表、損益計算書により確認されます。また、債務超過の場合、公的資格を有する第三者が作成した改善の見通しについての評価書面の提出が必要です。 |
⑮ |
労働者が希望した場合には、報酬を口座振込みにすること |
⑯ |
分野ごとの特有の事情により個別に定められた基準に適合していること ※詳細は、運用要領別冊(分野別)を参照 |
外国人への支援の適正な実施に係る基準 |
|
① |
中長期在留外国人の受入れ実績等、一定の条件を満たす支援責任者および支援担当者を選任すること ※支援の全部を「登録支援機関」に委託する場合は、この条件は免除されます。 |
② |
特定技能外国人が十分に理解できる言語による支援体制があること ※通訳人は必要なときに委託することで足ります。また、支援の全部を「登録支援機関」に委託する場合は、当該登録支援機関においてこの支援体制があることが必要となります。 |
③ |
支援の実施状況に係る文書を雇用契約終了の日から1年以上備え置くこととしていること ※支援の実施状況に係る文書とは、「支援実施体制に関する管理簿」、「支援の委託契約に関する管理簿」、「支援対象者に関する管理簿」、「支援の実施に関する管理簿」をいいます。 |
④ |
支援の中立性が確保できること ※組織図を作成した際に縦のラインにある者は、支援責任者、支援担当者になることはできません。 |
⑤ |
支援実施義務の不履行がないこと |
⑥ |
特定技能雇用契約の当事者である外国人とその監督者と定期的な面談を実施する体制を有していること ※支援の全部を「登録支援機関」に委託する場合は、当該登録支援機関において面談を実施します。 |
⑦ |
分野ごとの特有の事情により個別に定められた基準に適合していること ※詳細は、運用要領別冊(分野別)を参照 |
Ⅳ 契約適合性
特定技能外国人との雇用契約については、「雇用契約の内容が適正か」および「外国人の適正な在留のために必要な措置がとられているか」という2つの観点から審査されます。申請には、これらを確認するための雇用条件書等の資料の提出が求められます。具体的には次のとおりです。
雇用契約の内容の基準 |
|
① |
分野ごとに定められた水準を満たす技能を要する業務に従事させること |
② |
フルタイムで雇用されている一般の労働者の所定労働時間と同等であること ※フルタイムとは、原則、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ、週労働時間が30時間以上であることをいいます。 |
③ |
同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同等以上であること |
④ |
特定技能外国人から一時帰国の申し出があった場合、有給休暇を取得できるよう配慮すること |
⑤ |
派遣の場合、派遣先および派遣の期間が定められていること ※派遣形態は、「農業分野」と「漁業分野」のみとなります。 |
外国人の適正な在留のために必要な措置 |
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① |
外国人が帰国費用を負担することができない場合、受入機関が費用負担すること ※原則は、当該外国人の本人負担です。 |
② |
雇入れ時の健康診断や雇用期間中の定期健康診断を適切に実施すること |
③ |
分野ごとの特有の事情により個別に定められた基準に適合していること ※詳細は、運用要領別冊(分野別)を参照 |
Ⅴ 支援計画適合性
受入れ機関は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成しなければなりません。この計画は、1号特定技能外国人が活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援の実施に関する計画をいうものとされており、この計画に則って支援を行う必要があります。支援には必ず行わなければならない「義務的支援」と任意的に行う「任意的支援」がありますが、たとえ任意的支援であっても計画をした場合には必ず行わなければなりません。
この「1号特定技能外国人支援計画書」については、支援の全部を登録支援機関に委託した場合であっても受入れ機関が作成する必要があります。もっとも、この支援計画の作成にあたっては、実際に支援を行うこととなる登録支援機関の助言を妨げるものではないので、登録支援機関と十分に相談するなどして作成することができます。
1号特定技能支援計画の概要は次のとおりです。
1号特定技能外国人支援計画の記載事項 |
|
① |
事前ガイダンス ※雇用契約締結後、入管申請の前までに、労働条件・活動内容・入国手続・保証金の有無等について、対面やテレビ電話等により説明します。 |
② |
出入国する際の送迎 ※入国時に空港等と事業所または住居への送迎を行います。 ※帰国時には、空港の保安検査場までの送迎・同行を行います。 |
③ |
住居確保・生活に必要な契約支援 ※社宅の提供や賃貸物件の保証人になる等が必要です。 ※銀行口座開設や携帯電話、ライフラインの契約等の案内・手続の補助を行います。 |
④ |
生活オリエンテーション ※円滑な社会生活が営めるよう、ルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応等を説明します。 |
⑤ |
公的手続等への同行 ※必要に応じ、住居地・社会保障・税などの手続の同行、書類作成の補助を行います。 |
⑥ |
日本語学習の機会の提供 ※日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等を行います。 |
⑦ |
相談・苦情への対応 ※職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言語での対応、内容に応じた必要な助言、指導等を行います。 |
⑧ |
日本人との交流促進 ※自治会等の地域住民との交流の場や地域のお祭り等の行事の案内や参加の補助を行います。 |
⑨ |
転職支援 ※受入機関の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報提供等を行います。 |
⑩ |
定期的な面談・行政機関への通報 ※支援責任者等が外国人およびその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談し、労働法等の違反があれば関係行政機関への通報を行います。 |
「特定技能」の申請にあたって
「特定技能」の在留申請にあたっては、以上の許可要件全てを満たすことを証明する書面や誓約書の作成および資料の収集が必要となります。各種書面の作成は、出入国関係法令や労働関係法令の専門的な知識が必要となってきますので、法令や運用要領等をよく確認されるか、専門家への依頼を検討されることになろうかと思います。
当事務所では、2019年4月の改正入管法の施行以来、「特定技能」に注目し、積極的に受入れ相談、申請業務の受任を行って参りました。当事務所では、最初のご相談の際に許可の可能性を診断いたします。また、現状では許可要件を満たさないものの対策することによって許可要件を満たすようになるというケースもあります。その場合は、そのことをアドバイスさせていただき、この先に進むか否かのご判断をいただきます。
ここで先に進める場合、公的な証明書類や受入機関に関する資料の収集を行います。その結果、当初のご相談時の内容と違う新たな事実が判明し、あるいは事情変更により対策の効果が望めず、許可要件を満たすことが困難ないしはできないというケースもあります。その場合、ご相談のうえ改めて申請するか否かのご判断をいただきます。
申請にいたるまでの各段階において、その都度、状況を把握しご相談あるいはご提案しますので、スピーディーに経営判断していただくことができます。
なお、特定技能外国人雇用は、受入れ後に必要となる業務があります。1号特定技能外国人の支援もそうですが、各種管理簿の作成備え置きや雇用内容・支援内容に変更があった際の随時の届出、四半期に一度の定期の届出等が必要となり、これらを怠ると罰則が適用される可能性があります。そのうえ、各種管理簿は様式の設定がないため、それぞれの受入れ機関が独自に作成しなければなりません。
当事務所では、このような特定技能外国人を受入れた後に必要となる業務についてもサポートしております。各種管理簿のひな型を提供するとともに受入後の業務全般にわたってご相談いただけます。もちろん、ご自身や登録支援機関等で許可取得した後の受入れ後サポート業務のみであっても対応いたします。